「もう落ちない」と言われた黄ばみ、あきらめる前に|職人が作業台で見ている5つの判断

「もう落ちない」と言われた黄ばみ、あきらめる前に
衣替えでクローゼットから出したシャツやニット。
衿や脇が、うっすら黄色くなっていた。
もう一度洗ってみたけれど、変わらなかった。
そんな一着を、そのままたたんで奥にしまい直したこと、ありませんか?
先月は「夏物を洗わずにしまうと黄ばむ理由」として、黄ばみを出さないためのしまい洗いのお話をしました。
今日は、その続きです。
すでに出てしまった黄ばみは、どこまで戻せるのか。
シロヤの作業台で職人が何を見ているのかを、一緒にのぞいてみましょう。
① おさらい:黄ばみは「残った皮脂の酸化」
黄ばみのもとは、洗っても落ちなかった、うすく残った皮脂です。
皮脂の主成分は中性脂肪(トリグリセリド)。
これが空気中の酸素と結びついて酸化し、黄色から茶色の物質に変わっていきます。
やっかいなのは、酸化が進むほど汚れが固まり、水にも溶けにくくなること。
だから、黄ばんでから洗濯機で洗っても、なかなか動かないんですね。
くわしい仕組みと、来年のための予防は、先月の記事「夏物を洗わずにしまうと黄ばむ理由」でお話ししています。
② 落ちる黄ばみと、落ちにくい黄ばみ
同じ「黄ばみ」でも、状態はずいぶん違います。
シロヤで比較的落ちやすいのは、こんな黄ばみです。
- しまっていた期間が1年ほどまで
- うすい黄色で、生地の表面にとどまっている
- ご家庭で漂白剤を使っていない
- 綿・麻・ポリエステルなど、水に強い素材
反対に、手強くなるのがこちらです。
- 何年も着ないまま置いていた
- 茶色に近い色まで変わっている
- 黄ばんだままアイロンをかけた(熱で繊維に固定されます)
- シルク・ウール・レーヨンなど、水や薬品に弱い素材
- 塩素系漂白剤を使って、まわりの色まで抜けている
「何年も前の黄ばみは無理」という話ではありません。
ただ、ここまで来ると特殊しみぬきとして、時間をかけたお見積もりになります。
ちなみに、白い点々や、カビ臭さをともなう変色は、黄ばみではなくカビのこともあります。
見分けがつきにくいので、迷ったらそのままお持ちください。
③ ご家庭で漂白した服は、どうなっているか
「黄ばみに気づいて、漂白剤につけてみました」
受付でよくうかがうお話です。
酸素系(過炭酸ナトリウム系)の漂白剤を、ぬるま湯で短時間。
洗濯表示で水洗いができる素材なら、この範囲ならまだマシです。
気をつけていただきたいのは、その先です。
熱いお湯で長くつけ置きすると、生地そのものが弱ります。
色柄物に塩素系を使うと、黄ばみより先に服の色が抜けてしまいます。
実際に、こんな一着をお預かりしたことがあります。
衿の黄ばみが気になって、塩素系の漂白剤を直接つけられた、淡いブルーのシャツ。
作業台に広げると、黄ばみのあった衿の中心だけが、より白くぬけていました。
黄ばみは、たしかに薄くなっている。
けれどそのまわりに、白い輪ができてしまっている。
こうなると、黄ばみを抜く作業では、もう元に戻せません。
そして、一度抜けた色は、しみぬきでは戻りません。
そこから先は、色を足す「染色補正」の仕事になります。
そして、もうひとつ多いのが、つけ置きのしすぎです。
半日ほど漂白剤につけたままにされたウールのニットは、乾いたあと、その部分だけ手ざわりが固くなっていました。
繊維の表面が傷むと、光の返り方が変わります。
色は同じでも、そこだけくすんで見えてしまうんですね。
ですから「やってみて、残ったら相談しよう」より、「やってみる前に、ちょっと相談」のほうが、ずっと安全なんですね。
④ やってはいけないNG行為(黄ばみを見つけたとき)
- 色柄物に塩素系漂白剤:黄ばみより先に、服の色が抜けてしまうことがあります
- ゴシゴシこする:生地が毛羽立ち、その部分だけ白っぽくなります
- 熱いお湯でのつけ置き:素材によっては縮みや型くずれの原因になります
- 黄ばんだままアイロン:熱で黄ばみが固定されます
- そのまま、もう一度しまう:酸化はさらに進み、来年はもっと落ちにくくなります
「今年は気づかなかったことにして、また来年」
これが、一番やばいパターンかもしれません。
⑤ 職人は、黄ばみのどこを見ているのか
シロヤでは、まず素材と、黄ばみがどこまで進んでいるかを確認します。
黄ばみは油汚れなどが、酸化して変化したものなので、ドライクリーニングだけでは落ちません。
そこで、水を使った処理を組み合わせます。
残った皮脂を動かしてから、変色した部分を酸素系の漂白剤で少しずつ分解していく。
必要に応じて、温度や時間を変えながら様子を見ます。
このとき大切なのが、「服の色と風合いを守りながら」という点です。
漂白の力を強くすれば、黄ばみは落ちやすくなります。
でも同時に、生地が弱ったり、染料まで抜けたりするリスクが上がります。
黄ばみを抜くことは引き算。
引きすぎると、今度は色を足す「染色補正」が必要になってしまいます。
だから、落ち具合を確認しながら、少しずつ進める。
動かなければ深追いせず、別の方法に切り替える。
これが、生地を守るしみぬきの考え方です。
作業台では、具体的にこの5つを見ています。
1. 素材:水に入れられるか、薬品に耐えられるか
洗濯表示を確かめ、生地を指でつまんで、厚みと織りの詰まり方を見ます。ウールやシルクは、上げられる水の温度の幅が、綿よりずっと狭くなります。
2. 染色の強さ:色が動きやすい生地かどうか
縫い代の裏や裾の内側など、着たときに見えない場所に薬品を少しだけのせて、白い布に色が移らないかを先に確かめます。ここで色が動く生地は、弱い薬品で時間をかける方針に最初から切り替えます。
3. 黄ばみの深さ:表面にとどまっているか、繊維の芯まで入っているか
生地を斜めから光にあてると、表面だけの黄ばみは角度によって消えて見えます。芯まで入っているものは、どの角度から見ても黄色いままです。
4. これまでの処置:ご家庭で漂白されたか、こすられていないか
こすられた部分は、まわりより毛羽が立って白っぽく見えます。漂白剤が残っている場合は、先にそれを抜いてからでないと、次の処理が進みません。
5. 引きどころ:どこまで抜けば、生地と色を守ったまま戻せるか
数分おきに水気を切って、黄ばみの残り具合と、まわりの色の変化を見比べます。黄ばみが動かなくなったら、そこでやめる。
いちばんむずかしいのは、5番目です。
「もう少し」をどこでやめるか。
ここだけは、年数をかけないと身につかないところだと思っています。
⑥ それでも落ちないときの、もうひとつの選択肢
全力で抜きにいっても、黄ばみが残ることはあります。
そのときも、まだ手はあります。
染色補正です。
しみぬきが「引き算」なら、染色補正は「足し算」。
残った変色の上に、生地の色に合わせた色をのせて、目立たない状態に近づけていく仕事です。
シロヤでは、仕上がりが硬くならないバインダー(色を生地に定着させるのりのようなもの)を使い、風合いを残したまま色をつくります。
黄ばみが抜けきらなくても、また着られる状態に戻せることがあるんですね。
もちろん、できる・できないは一点ずつ違います。
ウール・カシミヤのニット、シルクやレーヨン、濃い色の服、一度ご家庭で漂白された服は、まずは見せていただきテストするところから。
シロヤの「特殊しみぬき」は、この見極めと手間のための料金です。
来年のために:しまう前のひと手間
とはいえ、黄ばみは出てから抜くより、出さないほうがずっと簡単です。
シロヤでは、ドライクリーニングのあとに水でも洗う**W洗い(ダブル洗い)**をご用意しています。
油汚れはドライで、汗や水溶性の汚れは水で。
しまい洗いのくわしいお話は、先月の記事「夏物を洗わずにしまうと黄ばむ理由」をどうぞ。
今月のあきらめないしみぬき|しまっていた服の黄ばみ
シロヤでは毎月ひとつのシミを取り上げる「今月のあきらめないしみぬき」を行っています。
9月はコーヒー、そして第2回となる10月は、しまっていた服の黄ばみです。
シロヤ会員アプリ、LINEにて、10月9日〜10月31日(土)まで、黄ばみのしみぬき技術料が1点200円OFFクーポンを配信しています。(クリーニングと同時にクーポン画面をご提示ください)。
黄ばみの状態や素材、経過時間によって、落ち方や料金は異なります。
「必ず落ちます」とはお約束できませんが、全力で取りに行くことはお約束します。
クローゼットの奥で眠っている、黄ばんでしまった一着。
あきらめる前に、もう一度ご相談ください。
しみぬき職人がお答えします。
香里北之町本店・香里新町店でお待ちしています。
LINEで写真を送っていただくだけでも簡易診断をしています。
よろしくお願いします。
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